息子が人工内耳を受けることになったため、言語聴覚士の先生より人工内耳のメーカーについての説明を受けました。
結論から言うと、国内で認可されている人工内耳メーカーのうち、どのメーカーを選択しても大きな差はありません。
ただ、メーカーによる差や特色の違いがあることも確かなため、ブログにまとめておこうと思います。
なお、万一、記載に間違いがあった場合、追加で記載すべき内容がある場合、ご指摘いただけると大変助かります。
日本国内で現在認可されている人工内耳メーカーは、コクレア社、メドエル社、アドバンスド・バイオニクス社の3社です。
国内でのシェアは、コクレア社とメドエル社の2社がほとんどを占めること、息子がかかっている病院では、コクレア社とメドエル社のうちどちらかからしか、メーカーを選択することができないことから、今回の比較は、コクレア社とメドエル社の比較をしていきたいと思います。
人工内耳メーカーの比較
コクレア社とメドエル社の人工内耳の製品の比較をしていきます。
人工内耳は、体内に埋め込むインプラントと対外装置であるプロセッサーの2つから構成されます。
インプラントは、外科的手術により体内に埋め込んで使用されるもので、一度埋め込むと基本的には一生にわたり使用することになります。
インプラントは、プロセッサーから送られてきた電気信号を、実際に聴神経に伝えるはたらきをします。
プロセッサーは、周りの音を拾い、それを電気信号に変えてインプラントに伝えるはたらきをするもので、耳にかけて使用する耳掛け型と、インプラントの磁石部分に直接つけて使用するコイル一体型に分けられます。
耳掛け型には、軽い、外れにくい、(両耳装用の場合は特に)耳に近いところで集音するため音の方向感覚がわかりやすいなどの特徴があります。
コイル一体型は、目立ちにくく、女性の場合、髪で隠すことができるといった特徴があります。
プロセッサー
コクレア社とメドエル社の両方に耳掛け型とコイル一体型の2種類のプロセッサーがあります。
まず、耳掛け型の比較です。
2023年7月現在、国内で認可されている最新の製品は、コクレア社のN7とメドエル社のSONNET2です。
N7 | SONNET2 | |
大きさ | 36.5mm×9.0mm×45.0mm(長さ×幅×厚さ) 中サイズのイヤフックと コンパクト充電式電池パックを接続した場合 | 37.4mm×9.3mm×51.4mm(長さ×幅×厚さ) 充電池XSタイプ使用時 |
重さ | コンパクト充電式電池パック使用 7.9g スタンダード充電式電池パック使用 9.8g 空気亜鉛電池2個使用 10.1g | 充電池XS使用 8.1g 充電池スタンダード使用 9.1g 空気亜鉛電池2個使用 10.6g |
耐久性能 | IP57(お風呂が可能) アクアプラス使用でIP68(完全防水) | IP54(生活防水レベル) ウォーターウェア使用でIP68(完全防水) |
電池の持ち | コンパクト充電式電池パック:最長19時間 スタンダード充電式電池パック:最長40時間 使い捨て電池用電池パック:最長80時間 | 充電池XSタイプ:最長7時間 充電池スタンダードタイプ:最長10時間 空気亜鉛電池2個:最長60時間 |
本体カラー | 5色6種類から選択 | マイクロフォンカバーと バッテリーカバーは15色から選択 |
コクレア社は、全世界でのシェア率が70%あるということもあり、メドエル社の製品と比較して優れている部分が多いように感じます。
特に電池の持ちに関しては、カタログ上大きな差があるように感じます。
次は、コイル一体型の比較です。
2023年7月現在、国内で認可されている最新の製品は、コクレア社のKanso2とメドエル社のRANDO3です。
Kanso2 | RANDO3 | |
大きさ | 38mm×34mm×12.5mm(長さ×幅×厚さ) | 44.9mm×35.8mm×11.9mm(長さ×幅×厚さ) |
重さ | 14.2g 磁石装着時 | 15.9g スタンダードカバーとマグネット強度1装着時 |
耐久性能 | IP68(完全防水) 防水アクセサリあり | IP68(完全防水) 防水アクセサリあり |
電池の持ち | 連続使用可能なバッテリー寿命:最大18時間 | フル充電で朝起きてから寝るまで |
本体カラー | 5色から選択 | 本体は1色 カバーは全30種類以上 |
コイル一体型に関しても、どちらかと言えばコクレア社のほうが優れている部分が多いように感じます。
RANDO3のカタログには具体的な電池最大使用時間の記載は書いていませんでしたが、Kanso2と大きくは変わらないように思います。
言語聴覚士さんの経験上、メドエル社に比べ、コクレア社の製品のほうが壊れにくい印象があるそうです。
両社ともに、音を聞き取りやすくするための独自技術を持っていますが、音の聞き取りの成績は両社で大きく差がないようです。
それぞれのプロセッサーの独自技術について詳しく知りたい方は、それぞれのウェブサイトをご覧ください。
コクレア社:日本コクレア | Hear now. And always (cochlear.com)
メドエル社:MED-EL Japan (medel.com)
インプラント
インプラントとプロセッサーは、同じメーカーのものを選択する必要があります。
そのため、インプラントに関しても比較していきます。
コクレア社のインプラントはProfileシステム、メドエル社のインプラントはSYNCHRONYシステムと呼ばれます。
Profileシステム | SYNCHRONYシステム | |
信頼性 | 発売後より4年で99.87%の患者が問題なく使用 | 2年で99.1%の患者が問題なく使用 |
厚さ | 最大3.9mm | 最大4.5mm |
本体サイズ | 50.5mm×31.0mm | 45.7mm×25.4mm |
電極数 | 24(アース含む) | 24(FLEXシリーズは19) |
チャンネル数 | 22 | 12 |
最大刺激頻度 | 31500回/秒 | 50704回/秒 |
MRIへの対応 | 1.5T、3.0TMRIの撮影に対応 Plusが認可され磁石を取り外す必要がなくなった | 1.5T、3.0TMRIの撮影に対応 磁石を取り外す必要がない |
コクレア社のインプラントを使用しても、メドエル社のインプラントを使用しても、基本的にはきこえの程度に大きな差はないようです。
メドエル社のインプラントに使用される電極には、残存聴力を活かすタイプの電極が認められているため、残存聴力を活かしたうえで人工内耳手術を受けたい方には、メドエル社のインプラントがおすすめだそうです。
また、メドエル社のSYNCHRONYシステムは、MRI撮影時に磁石を取り外す必要がない点も大きな特徴かと思います。
インプラント及びプロセッサーの比較には、各社のカタログのほかに、東京大学病院からまとめられた2社の比較スライドも参考にさせていただきました。
ただ、インプラント及びプロセッサーの比較機種が、東京大学病院のスライドは前世代のもののため最新の情報とは異なる点には注意が必要です。
このブログでは、2023年7月現在認可されている最新機種同士で比較をしています。
我が子にはどのメーカーの製品を選択する予定か
今までまとめた情報を踏まえて、我が子には、コクレア社のN7プロセッサーを選択することにしました。
インプラントとその電極に関しては、基本的に病院側が最適なものを同じメーカーから選択することになると思います。
コクレア社のN7プロセッサーを選択した理由は下記の通りです。
- プロセッサーの大きさや重さがメドエル社のSONETT2と比べ小さい
- まだ子供のため、コイル一体型だと外れる回数が多くなる可能性がある
- カタログ上、電池持ちがメドエル社のSONETT2と比べ良い
- 実際のデモ機に触れることができ、息子が着けている姿を想像できた
- 国内のシェア率が高い
やはり、1歳にも満たずに人工内耳をつけて生活することを考えると、少しでも軽く小さいプロセッサーを選んであげるほうがいいのではないかと考えました。
また、こどもなので、これから元気よく走り回ったり飛び跳ねたりするようになることが考えられます。
そのため、少しでも外れにくいもののほうがよいと考えました。
また、耳にかけることで、聴覚に対する周りからの配慮を受けられる可能性も上がるとおもいます。
また、N7プロセッサーはメドエル社のSONETT2と比べ、バッテリーの持ちがよいのも大きなポイントかと思います。
実際のデモ機に触れることで、息子が着けている姿を想像できたことも大きなポイントの一つです。
国内のシェア率が高いため、同機種を使っている方に、使い方や何かトラブルがあった時に相談もしやすいのかなと思います。
息子には残存聴力がほとんど残っていないので、残存聴力温存に関してはそこまで重視する必要がないと思いました。
この記事が、皆さんの人工内耳メーカー選択の参考になれば幸いです。