日本では、2023年8月現在、装用できるコクレア社の最新の人工内耳プロセッサーは、Nucleus®7(CP1000)「以下、コクレアN7と記載」ですが、実はアメリカやオーストラリアなどの海外では、それよりも新しいNucleus®8(CP1110)「以下、コクレアN8と記載」が発売されており、実際に使用されている方が多くいます。
追記2023年10月2日:コクレアN8は2023年10月2日から日本でも発売となりました。
また、日本でもコクレアN8が近い将来、発売されることが予想されます。
そのため、コクレアN7とコクレアN8の違いについて、現在わかる範囲でまとめようと思います。
追加で情報が入った際は、適宜更新する予定です。
間違いがないようにチェックをしているつもりですが、万一記載に間違いがあった場合は、ご指摘いただけると大変助かります。
コクレアN8はいつ発売されるのか
コクレアN8の発売予定日は、2023年8月現在、未定です。
追記2023年10月2日:2023年10月2日より発売が開始されました。
ただ、アメリカやオーストラリアなどの海外では、使用されており、日本でも近い将来に発売されることが予想されます。
追記2023年10月2日:これから日本でもコクレアN8の装用者が増えていくと予想されます。
なお、日本国内においては、コクレアN8のような医療機器は、医療機器製造販売承認がされた後、保険適応がなされ、その後、実際に発売日が決定となります。
では、コクレアN7の医療機器製造販売承認から実際の発売開始までは実際どのような流れだったのでしょうか。
調べたところ、以下のような流れになっていました。
コクレアN7
FDA(米国食品医薬品局)承認 | 2017年6月 |
医療機器製造販売承認 | 2018年10月 |
保険適応 | 2018年12月 |
販売開始 | 2019年1月 |
米国でのコクレアN7承認から、およそ1年7カ月後に日本での発売が開始されたことがわかっています。
やはり、米国と日本ではタイムラグがそれなりにあるんだなというのが正直な感想です。
コクレアN8がいつ発売されるかは、まだ未定ですが、コクレアN8の発売日が決定する前には、医療機器製造販売承認が下りる必要があります。
2023年8月現在、私が調べる限りではまだコクレアN8の医療機器製造販売承認は下りていないようです。
追記2023年8月17日:コクレアN8の医療機器製造販売承認がどうやら下りたようです。
コクレアN7が10月に承認されたことから、同じようにコクレアN8も10月に承認された場合、販売開始は2024年1月になることが予想されます。
また、コクレアN8のFDA(米国食品医薬品局)の承認は、2022年11月に行われました。
FDA(米国食品医薬品局)承認から、コクレアN8の発売開始までの期間が、コクレアN7と同じ時間を要すると仮定して当てはめた場合は、以下のようになります。
FDA(米国食品医薬品局)承認 | 2022年11月 |
医療機器製造販売承認 | |
保険適応 | |
販売開始 |
上記の表は、あくまでもコクレアN7と同じ時間がかかったと仮定した発売開始時期の予想のため、実際の発売開始時期がいつになるかはわかりません。
個人的には、2024年6月よりも早く発売開始になるのではないかと思っています。
追記2023年10月2日:当初の個人的な予測と比べ、発売日がはやくなり、大変うれしく思います。
コクレアN7とコクレアN8の比較
アメリカやオーストラリアでは、実際にコクレアN8が発売されており、いくつか英文の資料を見つけることができたので、コクレアN7とコクレアN8との比較をすることができました。
今回は、ハード面とソフト面に分けて順に比較をしていきたいと思います。
ハード面
まずは、ハード面の比較からしていきます。
コクレアN7 | コクレアN8 | |
大きさ | 36.5mm×9.0mm×45.0mm(長さ×幅×厚さ) 中サイズのイヤフックと コンパクト充電式電池パックを接続した場合 | 34.5mm×8.9mm×41.3mm(長さ×幅×厚さ) 中サイズのイヤフックと コンパクト充電式電池パックを接続した場合 |
重さ | コンパクト充電式電池パック使用 7.9g スタンダード充電式電池パック使用 9.8g 空気亜鉛電池2個使用 10.1g | コンパクト充電池電池パック使用 6.9g パワーエクステンド充電式パック使用 9.4g 空気亜鉛電池2個使用 9.9g |
耐久性能 | IP57(お風呂が可能) アクアプラス使用でIP68(完全防水) | IP68(完全防水) |
電池の持ち | コンパクト充電式電池パック:最長19時間 スタンダード充電式電池パック:最長40時間 使い捨て電池用電池パック:最長80時間 | コンパクト充電式電池パック:一般的な使用で10時間 パワーエクステンド充電式パック:一般的な使用で20時間 使い捨て電池用パック:一般的な使用で35時間 |
本体カラー | 5色6種類から選択 | 6色から選択 |
コクレアN8は、コクレアN7と比べ、13%軽くなり、15%小さくなりました。
ただし、パワーエクステンド充電式パック使用時や、空気電池使用時には、コクレアN7との差は縮まります。
また、コクレアN8はイヤフックとサウンドプロセッサーの背面の間の距離が短縮され、N8の曲線と形状にわずかな変更がなされました。
この設計変更は、耳への快適さと保持力の向上が目的のようです。
コクレアN8は、コクレアN7と比べ、防塵防水機能がさらにパワーアップし、完全防水に相当するIP68の耐久性能を持つようになりました。
耐久性能が向上したため、水やホコリによる故障率はかなり下がることが予想されます。
ただし、コクレア社は水泳や水遊びの際は、防水アクセサリであるアクアプラスの使用を推奨している点は留意してください。
電池の持ちに関しては、前機種であるコクレアN7からの進化はないように感じます。
カタログ上、コクレアN7はコンパクト充電式電池パック使用時に最長19時間使用できるのに対し、コクレアN8は一般的な使用で10時間となっています。
追記2023年10月2日:コクレアN7は最長、コクレアN8は一般的な使用と電池の比較基準が異なりますが、どうやら電池の持ちはコクレアN7もN8も一般的な使用下ではほとんど同じのようです。
また、コクレアN7のスタンダード充電式電池パックは、コクレアN8になり、パワーエクステンド充電式パックへと名称が変更となったようです。
コクレアN7には、5色のバリエーション(黒はメッキ加工部分がシルバーとゴールドの2種あり)がありますが、コクレアN8には、本体カラーに新しくシルバー色が追加となり、黒は1種類のみとなりました。
ソフト面
次は、ソフト面の比較をしていきたいと思います。
コクレアN7 | コクレアN8 | |
音声処理技術 | SmartSound® iQ with SCAN | SmartSound® iQ2 with SCAN2 |
フォワードフォーカス | 手動切替のみ | 自動及び手動切替 |
Bluetooth | Bluetooth Low Energy | Bluetooth LE Audioに対応 |
Auracast | 非対応 | 対応 |
コクレアN7には、SmartSound® iQ with SCANと呼ばれる音声処理技術が搭載されています。
SmartSound® iQ with SCANは、コクレア独自の音声処理技術で、プロセッサーが拾った音をその環境に合わせて自動的に調節することで、自然な聴こえを再現してくれる機能です。
周囲の状況を解析し、「静寂下」、「雑音」、「風」などの6種類の場面から聴取環境を特定し、プログラムが自動的に音を最適化し、様々な聴こえの状況に合わせて設定を調節して、より良い聴こえをサポートしてくれます。
コクレアN8には、SmartSound® iQ with SCANからさらに進化した、SmartSound® iQ2 with SCAN2が採用されています。
コクレア社によると、コクレアN8では前機種のコクレアN7と比べ、騒音下のシーン設定では、8%の聴き取り向上、全聴取環境でのシーン設定では、11%の聴き取り向上が見られたそうです。
コクレアN7にも、コクレアN8にもフォワードフォーカス機能が搭載されています。
フォワードフォーカス機能とは、騒がしい環境で目の前の相手との会話に集中したいときに便利な機能で、背景の雑音を減らして、前方の音の聴き取りを向上させる機能のことをいいます。
コクレアN7では、手動でしかこのフォワードフォーカス機能をオンオフすることができませんでしたが、コクレアN8では、自動か手動でオンオフするかどうかを使用者が選ぶことができるようになりました。
また、コクレアN8に搭載されているフォワードフォーカス機能は、コクレアN7のものと比べて左右や後方からの騒音を小さくする機能が向上し、より聴き取りやすくなったようです。
ただし、この機能を有効にするには、耳鼻咽喉科でその設定をオンにしてもらう必要があります。
また、12歳以下は適した判断が難しいことから、コクレア社はこの機能をすべきではないと定めています。
コクレアN8は、次世代Bluetooth LE Audioに対応しました。
次世代Bluetooth LE Audioは、従来のBluetoothと比較して、高品質な音をほとんど遅延なく再生できます。
また、オーディオ再生中の消費電力を抑えられるため、バッテリーに負荷がかかりにくいといった特徴もあります。
コクレアN8は、Auracastにも対応しています。
Auracastとは、次世代Bluetooth LE Audioの機能の一種で、スマホやパソコン、テレビなどのオーディオから近くにある無制限の数のBluetoothオーディオ送信機にオーディオ配信ができる機能のことをいいます。
例えば、空港や駅、劇場などの場内アナウンスを直接コクレアN8から聞くことができたり、レストランや待合室などにおかれたミュートされたテレビの音声をコクレアN8で聞くことができます。
ただし、現在日本において、Auracastに対応している公共施設はほとんどないため、活用できる機会はまだ少ないでしょう。
この記事が、みなさんの参考になれば幸いです。
参考サイト
日本コクレア | Hear now. And always (cochlear.com)
Nucleus® 8 Sound Processor | Cochlear Implant
Cochlear Nucleus® 8 Cochlear Implant | Reviews and Prices (hearingtracker.com)