オーディトリー・ニューロパチー(Auditory Neuropathy)及びANSD(Auditory Neuropathy Spectrum Disorder)について、先生の話や論文などでわかったことをまとめています。
適宜、加筆修正する予定です。
なお、私は耳鼻科専門医ではありませんので、その点はご了承ください。
オーディトリー・ニューロパチー(Auditory Neuropathy)
内耳では音や言葉が聞こえているのに、脳では正しくその意味を理解できないため、極端に言葉の聞き取りが悪くなる希少疾患である。
静かな環境だと1:1での会話が可能な場合があるが、少しでも雑音があると会話が困難になる。
先天性難聴児の約5%がANであると言われている。
ANSD(Auditory Neuropathy Spectrum Disorder)
新生児聴覚スクリーニング検査で、
ABR(聴性脳幹反応)で異常、
OAE(耳音響反射)で正常
となる病態である。
ANSD(Auditory Neuropathy Spectrum Disorder)は、
①聴力が正常になるタイプ
②高度難聴化するタイプ
③変わらないタイプ(先天性オーディトリーニューロパチー)
に細分化される。
聴力が正常になるタイプは、1歳くらいまでに聴力が回復することが多いため、1歳での聴覚状態が人工内耳をつけるかどうかの一つの目安になる。
ただし、1歳以降でも回復した例もある。
NICU児や低体重児、高ビリルビン血症などはハイリスク要因となるが、ハイリスク児のほうが聴力が回復する例が多い。
もちろん正常体重で産まれ、他に疾患がない乳児でも聴力回復例はある。
オーディトリー・ニューロパチー(Auditory Neuropathy)の治療方針
基本は補聴器装用で効果があるか確認して、効果があれば補聴器で様子を見る。
補聴器での効果があまりなければ人工内耳手術を検討する。
ANの場合、補聴器の効果は限定的であることが多いが、人工内耳は効果があることが多い。
人工内耳装用児の約75%に良好な効果がみられる。
オーディトリーニューロパチーの責任遺伝子として、OTOF遺伝子、OPA1遺伝子などが知られている。
遺伝子検査をしても必ずしも責任遺伝子が判明するわけではないが遺伝子検査は有用である。
OTOF遺伝子
変異により聴覚のみに異常をきたす。
人工内耳の効果が現れやすい。
ANの約半数がこの責任遺伝子の変異によるもの。
OPA1遺伝子
聴覚だけでなく、弱視などの視覚異常や平衡感覚異常を併発する場合がある
人工内耳の効果は現れやすい人が多い
ANのうち約20%が蝸牛神経低形成(CND)を併発しているといわれている。
CNDはCTやMRIなどによる画像検査で発見することができる。
一部のCNDはCTだけでは発見しづらいものもある
CND併発の場合、それ以外の場合と比べて人工内耳の効果は劣るが、ゆっくり話すと理解できるようになるなど一定の効果は見込めるとされている。
小児人工内耳の適応基準が2022年に変更となり、適応時期は
原則体重 8kg 以上かつ1 歳以上から
原則体重 8kg 以上または 1 歳以上になった。
要するに、1歳を待たずして手術が可能となった。
早めの人工内耳装用が言語獲得には有利にはたらく。
たとえば、1歳での人工内耳装用後、(リ)ハビリテーションがうまくいけば3歳くらいで健聴児と同レベルの語彙力に追いつくといわれている。
参考文献
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/25054
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/19800
https://www.otology.gr.jp/common/pdf/pcic2022.pdf