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完全埋め込み型人工内耳をFDAが承認

2024年11月にアメリカ食品医薬品局(FDA)が完全埋め込み型人工内耳を治験で使用することを承認しました。

これにより、今後米国内で基準を満たす治験参加希望者に対して、完全埋め込み型人工内耳手術を実施することが可能になりました。

日本でもそう遠くない未来に完全埋め込み型人工内耳が厚生労働省より認可され、実際に手術を受ける患者が出てくるかもしれません。

この記事では、完全埋め込み型人工内耳について今の段階で私がわかる内容についてまとめていきます。

間違いがないようにチェックをしているつもりですが、万一記載に間違いがあった場合は、ご指摘いただけると大変助かります。

完全埋め込み型人工内耳とは

完全埋め込み型人工内耳とは、読んで字のごとく、人工内耳として機能するすべての機器を皮下に埋め込むタイプの人工内耳のことを言います。

アメリカのミネソタ州にある聴覚デバイスを研究・開発しているEnvoy Medical社の完全埋め込み型Acclaim人工内耳の治験開始がFDAにより2024年11月に承認され、実際に米国内で基準を満たす治験参加希望者に対して、手術を実施することが可能になりました。

治験参加に関しては様々な基準が存在しますが、現在の治験の対象年齢は18歳以上となっています。

現在、日本をはじめ、世界中で主流となっている人工内耳は、皮下に埋め込むインプラントの部分と耳や頭につけてインプラントに外部の音などの情報を伝達する役割をもつプロセッサーから構成されています。

完全埋め込み型人工内耳の場合、このプロセッサーの役割をする装置に関してもすべて皮下に埋め込んで機能させることができます。

完全埋め込み型人工内耳にすることのメリット

完全埋め込み型人工内耳が登場することで、今までの人工内耳のデメリットの多くが解消されるのではないかと期待されています。

そのうちのいくつかを紹介したいと思います。

プロセッサーを紛失するリスクがゼロ

人工内耳をすべて完全に皮下に埋め込んでいるので、プロセッサーを紛失するリスクがゼロになります。

従来の人工内耳の場合、高価なプロセッサーを紛失しないように常に気を付けながら生活する必要があったり、紛失するリスクを考慮して保険に加入することで金銭的な負担が生じることがあります。

完全埋め込み型人工内耳の場合、これらの精神的な負担や金銭的な負担を軽減することが期待できます。

激しい運動も可能

従来の人工内耳の場合は、プロセッサーを耳にかけたり頭につけたりして使用するため、激しい運動をすることで、プロセッサーが落下したり、コイル部分が取れたりすることがあります。

完全埋め込み型人工内耳の場合は、プロセッサーに相当する部分が皮下に埋め込まれているため、どんなに激しく動いたとしても人工内耳が取れることはないため、運動の幅が広がります。

頭部に機器の埋め込みをするため、頭部に強い衝撃が加わる可能性のある運動に関しては、制限がかけられる可能性があると思います。

見た目が健聴者と変わらない

人工内耳が完全に皮下に埋め込まれるため、手術によりできる人工内耳挿入部の傷以外は、見た目は健聴者と変わらなくなります。

そのため、周りからの目を気にしないで、人工内耳のシステムを使用することが可能になります。

見た目のことを気にして人工内耳手術に踏み出せない人の背中を押してくれる存在になると思います。

ヘッドホン・イヤホン、補聴器も装着可能

プロセッサーに相当する部分も皮下に埋め込まれているため、耳には何もつける必要がなく、ヘッドホンやイヤホンを装着することが可能になります。

電話も耳に当てて使用することが可能になるでしょう。

また、補聴器も装着可能で、完全埋め込み型人工内耳をつけたうえで補聴器により補聴することで、より聞こえが良くなったというケースもあるようです。

水の中でも使用可能

現在主流となっている人工内耳も防水アクセサリを使用することで、水の中でも使用することは可能ですが、プロセッサーを一度耳から外し、防水アクセサリにセットする作業は非常に手間がかかります。

また、防水アクセサリを正しく使用できなかったことによる浸水リスクもあります。

完全埋め込み型人工内耳の場合は、何も気にせずそのまま水の中に入ることが可能です。

寝ている時間も含め1日中音が聞こえる

完全埋め込み型人工内耳の場合、寝る前にプロセッサーを取り外すといった作業がなくなるため、寝ている時間も含め1日中音が聞こえます。

そのため、朝に目覚まし時計の音で目覚めたり、夜に家族で会話をしながら眠るということも可能になります。

就寝中に起きた万一のトラブルや警報音に対しても適切に対処しやすくなるでしょう。

バッテリーも埋め込み

完全埋め込み型人工内耳を駆動させるバッテリーも皮下に埋め込まれるため、そのバッテリーから電気供給受けている外部電源に頼る必要がありません。

現在は、数日間持続可能な大型のバッテリーを胸部に埋め込み、頭部に埋め込んだ音を拾い蝸牛に音を伝達するはたらきをする機器にそこから電気を供給するシステムが採用されています。

帽子の着用や寝転がり時も気にならない

プロセッサーに相当する部分も完全に皮下に埋め込まれるため、耳や頭には何も装着する必要がありません。

そのため、帽子の着用もスムーズにでき、寝転がった時も耳や頭に不快感を覚えることがありません。

頭部に外部から何かつけるものがないため、例えば髪を切りに行ったり、お風呂場で髪を洗ったりする際もプロセッサーの存在を気にする必要がありません。

完全埋め込み型人工内耳の動作の仕組み

完全埋め込み型人工内耳の動作の仕組みについて知るには、実際にEnvoy Medical社のサイトにアクセスして、その映像を見るのが一番早いと思います。

下記のリンクからサイトにアクセスして、映像を見てみてください。

Acclaim® Cochlear Implant | Ear Implant | Envoy Medical

頭側部に外部からの音を拾い、内耳に電気信号に変換した音を伝えるはたらきをする機器が埋め込まれます。

従来の人工内耳の場合は、プロセッサーについているマイクから拾った音を電気信号に変換する処理が行われていますが、完全埋め込み型Acclaim人工内耳の場合は、耳の自然な解剖学的な構造を活用して音を聴取する設計となっています。

より具体的にいうと、外からの音により鼓膜が振動しその振動が骨に伝わる際の情報をセンサーで読み取ることで、その音の情報を得る設計となっています。

この音の情報を元に、音は電気信号に変換にされ、内耳に情報が伝達されます。

この仕組みより、外からの音を完全埋め込み型人工内耳を通じて聞くことができるようになります。

人工内耳に電気を供給するバッテリーは、フル充電で数日間持続可能な大型のものが胸部に埋め込まれます。

今後への期待

アメリカのFDAが完全埋め込み型人工内耳の治験の承認をしたことにより、今後実際に完全埋め込み型人工内耳を装用した人たちから貴重なデータがいくつも取れると思います。

これらのデータを活用しながら、まずは米国内での完全埋め込み型人工内耳の販売にまでこぎつけてほしいと思いますし、日本でも完全埋め込み型人工内耳の治験が始まっていくといいなと思います。

現在の治験の対象年齢が18歳以上ということで、小さい子供をもつ親御さんや本人にとっては少し残念な部分はありますが、治験を重ね安全性を確認したうえで、18歳以下でも今後完全埋め込み型人工内耳の手術ができるようになればよいなと思います。

今後、更なる新しい情報が出てくるのが楽しみです。

最後にこの記事を作成するにあたっての参考にしたサイトを紹介させていただきます。

Acclaim® Cochlear Implant | Ear Implant | Envoy Medical

Envoy Medical Receives FDA Approval to Initiate Pivotal Clinical Study for Breakthrough Hearing Device

Envoy Medical Receives FDA Approval to Initiate Pivotal Clinical Study for Fully Implanted Acclaim® Cochlear Implant | Hearing Health & Technology Matters

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ゆう

薬に含まれる有効成分オタクで、どのようなメカニズムで薬が効果を示すか勉強することが好きです。 2016年薬学部卒業後、調剤併設型ドラッグストアで薬剤師として勤務しています。 薬を使う必要性や注意事項など、わかりやく紹介していきます。

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